
今回の記事でご紹介するのはベトナム。
日本企業が海外進出する場合、まず調べておきたいのは外資規制について。
今回はベトナムの外資規制の現状について説明する他、
外資規制対象業種が進出するにはどのような方法があるのかをまとめました。
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おおまかな進出難易度(★が多いほど難易度高)
製造業の進出難易度:★☆☆☆☆
外資100%での進出が可能です。土地所有も比較的容易。
小売業の進出難易度:★☆☆☆☆
法改正により外資規制はありません。100%での進出が可能です。
卸売業の進出難易度:★☆☆☆☆
法改正により外資規制はありません。100%での進出が可能です。
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業種別、外資規制の現状
ベトナムの外資規制については、禁止業種と規制業種に分かれています。
禁止業種は投資が認められていない分野、規制業種は条件付き(省庁の認可や、投資比率の制限など)で投資が認められる分野になります。
外国投資が完全に規制されている分野(禁止業種)
麻薬物質に関連する事業、人身売買に関する事業など、
そもそも、外国人だからNGというものでもないので、詳細については省きます。
まず日本人が引っかかる事はない業種です。
外国投資が条件付きで許可されている事業分野(規制業種)
規制業種についてはまず、事業を行うに当って認可が必要なものがあります。
267業種ほどになるので、内訳はこちらのJETRO公開の資料をご参照ください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/vn/invest_02/pdfs/vn7A010_kakusyukisei.pdf
その他、業種によっては法定資本や、外資出資比率が定められているものもあります。
一部を表にまとめたものが以下になります。
※銀行業、保険業、空運事業、郵便業など、規模の大きい業種については除外しています。
詳細についてはお問合わせ下さい。
法定資本 | 外資出資比率 | |
不動産業 | 200億VND | |
債権回収サービス | 20億VND | |
警備サービス | 20億VND | |
研修生海外派遣サービス | 50億VND | |
人材紹介サービス | 3億VND | |
労働者派遣業 | 20億VND | |
観光サービス | 2.5億VND | |
広告サービス | 合弁会社でないと設立不可、出資比率制限なし | |
農林業や狩猟など | 外資比率49%まで | |
基本通信事業サービス | ネットワークインフラを備えない場合外資比率35%まで ネットワークインフラを備える場合51%まで |
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仮想プライベートネットワークサービス | ネットワークインフラを備えない場合外資比率30%まで ネットワークインフラを備える場合51%まで |
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Webコンテンツサービスなど | ネットワークインフラを備えない場合外資比率35%まで ネットワークインフラを備える場合50%まで |
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旅行代理店・ツアー手配業 | 合弁会社でないと設立不可、出資比率制限なし | |
娯楽サービス | 外資比率51%まで | |
ゲームセンター | 外資比率51%まで |
現状でのベトナムの外資規制についてお伝えしますと、ほぼ撤廃されつつあるというのが現状です。
WTO加盟以降、次々と市場開放政策が取られてきましたが、TPPへの参加をにらみ、更に外資が参入し易い環境の整備が急がれています。
2015年9月からは最大49%までとされてきた外資の出資制限を撤廃、外資100%も可能になったため、上記の不動産購入規制撤廃と併せて、外資参入はかなり容易になったと言えます。
日本企業の進出が多い代表的な業種としては、製造業、小売業(飲食業を含む)サービス業などがありますが、それらの業種についてはほぼ外資規制がされていません。
小売業に関しては2店舗目を出店する際に審査があるといった規制がありますが、TPP発効後5年後を目処に、その審査を撤廃するなどの制度変更が検討されており、外資にとっての参入障壁は低められていくことが予想されます。
ベトナムの外資規制で注目すべきは、以前あった規制がほぼ撤廃され、非常に進出しやすい国になった、ということ。
外資規制の内容については国内外からの圧力で度々変化するものですが、ベトナムの場合、一度緩和したということは今後も暫くは緩和の動きが続いていくと見られます。
長期的に見て海外企業は安心して進出することができる国の一つとなっています。
資本金規制について
アジア諸国の中では比較的珍しく、ベトナムではほぼ最低資本金の規制がなくなっています。
銀行業、保険業、映画製作などには規制がありますが、あまりそういった事業をされる方はいないかと思うので省略します。
これから進出する日系企業で資本金規制の対象になりそうな業種というと人材関連事業があるかと思いますが、
人材紹介業160万円、労働者派遣業1060万円ほどになっています。
製造業、サービス業、小売業については最低資本金の規制などはありませんが、
省庁の認可が必要な業種などの場合、非現実的な資本金の払込額だと認可が降りない場合があります。
また、制度上は外資100%が可能な部分であっても、教育事業への参入など、あまり国として好ましくないような内容であると、ベトナム人名義を借りるか多額の資本金を投入するかでないと会社設立は難しいとも言われています。
土地規制について
以前は不動産購入について規制がありましたが、2015年7月にはそれまで原則的に不可であった外国人の不動産購入が容認されました。
※ベトナムでは「土地は国民の共有財産で、政府に預けられて管理下に置かれている」という扱いなので、厳密には50年間の使用権をベトナム政府から購入するもので、リース・売買の自由も与えられるという形式になります。
ベトナム政府とのやりとりになるので、土地関係のトラブルの可能性は比較的低いかと思います。
外国人の就業規制について
政府の方針、考え方としては、他のASEAN諸国と同様
「ベトナム人で代替できる仕事であれば外国人でなくベトナム人を働かせて欲しい」
というところに尽きます。
具体的には、外国人の就労条件として
- その仕事に適した能力があること
- 職務を遂行する上で健康面において必要な条件を満たしていること
- 管理者、社長、CEO、専門家、技術者であること
が求められています。
3.については、具体的に以下の条件を満たせばOKです。
管理者 社長 CEO |
管理者・社長・CEOであることを証明する、労働許可書・労働契約書・任命状 あるいは、就労していた組織が、その人物が管理者・社長・CEOであることを確認した文書の提出 |
専門家 | 工学士・学士相当の学位を持っていることの証明 あるいは、その仕事に関して5年以上の職務経歴を持つことの証明 あるいは、外国の管轄機関・組織が、その人物が専門家であることを確認した文書の提出 |
技術者 | 1年間の専門技術の教育期間と、3年間以上の実務経験を持つことの証明 あるいは、専門教育修了の証明書を提出 あるいは、その仕事に関して5年以上の職務経歴を持つことの証明 |
また、犯罪歴がないことを証明しないといけないので、日本とベトナムで無犯罪証明書を取得する必要があります。
たまに諸外国であるような、
「外国人1人に対して現地人◯人の雇用を義務付ける」
といった制度はありません。
外資規制の対象業種が進出するなら
ほぼ外資規制が撤廃されているベトナムなので、外資規制業種が進出する際にあまり心配する必要はありませんが、
一部業種であれば合弁会社設立が必要であったりする場合があります。
合弁会社設立
殆どの業種について外資規制の緩いベトナムなので、合弁会社を設立する機会も少ないですが、IT関係事業などであれば外資出資比率49%以下となる場合もあります。
合弁企業を設立する上で一番大きなリスクといえば、合弁相手とトラブルがあった時に持ち株比率の面で不利な立場となることです。
あくまで合弁相手と合意の上で、という前提になりますが、
- 現地側の1株あたりの議決権を日本側より少なくすることで、実質的に経営権を取得する
- 現地企業49%、日系企業が懇意にしている弁護士2%、日系企業49%という配分にする
といった方法もあります。
フランチャイズ展開
ベトナムでは小売業などでも外資100%での進出が可能なので、諸外国のように外資規制対策という意味でフランチャイズ展開をする必要はありません。
ただ、ビジネス的な意味でフランチャイズ展開を行うというのは有効なので、外資規制という話を抜きにしても検討してみても良いとは思います。
デメリットとしては品質の管理が難しくなるといったことがあるものの、
反面、進出の際の手間を大幅に減らしつつ、現地企業のノウハウや販路を最大限活用できるという強みも。
自社で準備してじっくりと3店舗を設立するよりも、薄利多売形式でフランチャイズ権を販売して100店舗まで増やしたほうが、最終的に利益に繋がっている例もあります(フランチャイズで大成功している企業で言うと、味千ラーメンなどが有名ですね)
進出にあたって具体的に次は何をすべきか
合弁会社設立のためのパートナー探しはコンサルに相談するのが吉
外資規制の対象となった場合、合弁会社の設立を狙うのが良いということを先に書きましたが、合弁会社設立に当ってまず必要なのはパートナー。
とはいっても、海外進出前なのに現地企業に人脈などがあるかといっても、それは難しいと思います。
仮に人脈があったとしても、その企業/人に本当にビジネスを任せて良いでしょうか?
あまり人を疑いたくないものですが、
- 安心して現地企業/現地人に会社を任せていたらいつの間にか乗っ取られていた
- 方針の違いで対立してせっかく立ち上げたビジネスが瓦解してしまった
というリスクがあるのも事実です。
このようなことを避けるために、ある程度しっかりした機関などに紹介を依頼するべきでしょう。
現地の商工会議所や、進出支援企業などがその相談先となり得ます。
パートナーの紹介に関する依頼の他、合弁会社を組むことによるリスクの回避法など、豊富なノウハウを得ることが出来るので、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか?
進出支援企業としては、一社一社探すのも良いですが、出島などでいろいろな企業を比較してみるのも良いでしょう。
https://www.digima-japan.com
ベトナムの外資規制についてまとめた今回の記事、お役に立ったでしょうか?
他国についても順次纏めていきますので、ご確認くださいませ。
※本記事中の情報は2015年1月時点でのものとなります。
アジア関連の情報については頻繁に変化することが考えられますので、最新の情報についてはJETROなどでご確認下さいますようお願い致します。
また、ご不明点などございましたら当財団でもお問合わせは受け付けておりますので、よろしくお願い致します。
他国の外資規制についてはこちらも御覧ください。