海外進出体験:フィリピンで活躍する税理士・広瀬さんにインタビュー

 今回インタビューさせて頂いたのは、士業でフィリピンに進出された広瀬さん。

製造業やサービス業、小売業などでの海外進出の事例などはよくありますが、

士業で進出された方の話というのはあまり聞く機会がありません。

 

そこで今回は、大阪とマニラに事務所を構える広瀬さんから、

 

「そもそも、なぜ士業でアジアに進出しようと思ったのか?」

「士業として進出することで、どういった可能性が拓けたのか?」

といった内容を伺いました!

 

――本日はお時間を頂きありがとうございます!どうぞよろしくお願い致します。

 

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はい、こちらこそよろしくお願いします。

 

――まずは広瀬さんの日本でのお仕事について伺いたいのですが、現在の税理士としてのお仕事は何年ほど前からされているのでしょうか?元々、海外との関わりは強かったのでしょうか?

 

大阪で税理士事務所を開業して、今年でちょうど10年になります。

業務内容は、中小企業の税務会計や個人事業主の確定申告、相続税や贈与税など、一般的な税理士業務を行っていますが、今から5~6年前に外国人の確定申告のお手伝いを始めまして、この頃からアジアのお客様が増え始めたんです。今では、中国、韓国、タイ、パキスタン、インドそしてフィリピンのお客様がいらっしゃいます。ただ、その多くがフィリピンの方なんですね。日本国内に多くのコミュニティが存在しているようで、横のつながりがとても強いお国柄のようです。

 

――ということは、進出前から海外(アジア諸国)との関わりはあったという事ですね。それが海外進出のきっかけに繋がったのでしょうか?

 

外国人のお客様がいたという点での関わりはありましたが、進出についてはいくつかの要因が重なって決断しました。

まず、私のクライアント企業からアジア進出の相談が増えてきたんです。大手製造業の下請け企業などの多くが、その大手企業からアジア進出を強く迫られるんですね。理由は、現地サプライヤーとのコスト競争力からです。そんな話を聞いて、「私のお客様が海外を意識する時代なんだ」、「これからは中小企業も海外に出ていかなければ国際的な競争に生き残れない時代なのだ」と強く思ったのです。

あるクライアント企業が実際にアジアへ進出しましたが、2年ほどして撤退しました。その当時は、自分に知識や経験がないものですから何もできない自分に悔しい思いをしていました。その後中小企業のアジア進出について調べていくと、もともと好きなんでしょうね。ふつふつと興味がわいてきたんです。

あとは、先に進出していた同業者や、ビジネス好きの英会話の先生との出会いというのもきっかけになりました。ただ、最終的に背中を押してくれたのは、やはり財団さんとそのフィリピンパートナーである飯田さんとの出会いだったと思います。

 

――アジアの中でもフィリピンにされたというのは、お客さんにフィリピンの方が多かったこと以外にも理由などございましたか?

 

東京のセミナーでフィリピンに進出されている同業者の方と出会って意気投合しまして、その方から現地で日系の会計事務所が足りないといった現場の状況を伺ったことや、その当時からフィリピン人の講師にSkypeで英会話を習っていたのですが、その先生と一緒にビジネスをしよう!と盛り上がったんです。で、会いに行って話をしているうちに自分がフィリピンで仕事をする姿をイメージできるようになったんです。

 

――それは5年ほど前の話との事でしたが、今でも日系の会計サービスは不足気味なのでしょうか?

 

進出していく企業に対して、日系の会計サービスはまだまだ足りていないと思います。

いま国も「中小企業の海外進出」について多額の予算をつけて支援していますが、海外進出した“後”をサポートする仕組みは盛り込まれていないんですね。

進出した後の法律問題や、税務会計問題、人事労務問題など、これらを無視して海外進出の成功はありえないわけですから、このあたりはまさに我々士業が積極的に海外に出て行って、日本の中小企業をサポートしていかなければいけないと思っています。もちろんローカルの会計事務所や法律事務所はありますが、期限を守らなかったり、正確性など質の部分で日本のようなサービスを提供することろは少ないようです。

 

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マニラの夜景。アジアの病人と呼ばれていたのも今は昔。遅れを取り戻すかのような急速な発展に加え、英語話者の多さ、教育レベルの高さといった要因を背景に日本企業も多く進出していて、それに伴い会計や法務といった専門知識が必要とされる機会も増えています。

 

――失礼な話かもしれませんが、素人の私からすると、士業というと安定したお仕事のイメージがあります。それでもリスクやコストを掛けて海外に進出されたというのは、どうしてでしょうか?

 

先程話していた、中小企業の海外進出をサポートしたかった…あるいは、もともと異文化交流が好きだったという話もあるのですが

そもそも私は士業という仕事は安定していない、と思っているんですよ。極端な話、10年、20年したら仕事がなくなる可能性もあるんじゃないか?という危機感さえ持っています。

それこそソロバンの時代は税理士の仕事も多かっただろうと思いますが、今は通帳を読み取って自動で仕訳できるソフトなんかも出てきていますし、近い将来税金の有利不利も自動計算されるようになって自社ですべて完結できるようになると思っています。

さらに、今後の日本経済を考えても、人口は減少し高齢化が進んでいくわけですから、経済規模は縮小していくと考えられます。ということは、先行きが不安な日本よりも成長著しいアジアを視野に入れるべきだと考えることは、企業に限らず士業も同様ではないでしょうか。と考えると、タイミング的には今かなと思ったんですね。

 

 

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海外に出て行く日本の中小企業が増えていて、海外では仕事のチャンスが増えているということと、

技術の発展や海外との関わりによって、国内では税理士の仕事が減るかもしれないということ、

その両方が感じられる今こそが、進出の最大のチャンスなのかもしれません。

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――さて、ここまででフィリピン進出へのマインドを伺いましたが、次は事務所の設立までのお話を伺いたいと思います。

ASEAN諸国での税理士事務所開設…というとあまり事例を聞かないのですけれど、まず準備期間はどれほど掛けられていたのでしょうか?どのような事を準備されていましたか?

 

マニラに事務所を構えたのが1年ほど前ですが、海外進出を思い立ってからの準備期間は大体1年半ほどですね。現地に関する情報を調べたり、英文会計やフィリピンの税務に関する知識をつけたりしてました。情報源はWebや業界紙、本などを読んだり、知り合いの同業者からも積極的に話を聞きましたね。

制度など専門的な話については、中小機構や、大阪のフィリピン領事館に直接質問しにいったりしていました。中小機構には、私自身の海外展開の支援を依頼しに行ったこともあるんですよ。あっさり、断られましたけどね・・・(笑)

 

――財団からはフィリピンパートナーの飯田さんをご紹介させて頂きましたね。

 

はい。財団さんは、Webで中小企業の「海外進出」を調べていてヒットしたんです。毎月進出セミナーを開催されていたり、ASEAN諸国にパートナーをお持ちで、ご紹介いただけるようでしたので早速連絡させていただきました。やはり海外進出にあたっては情報は多い方が良いと思いましたので。

で、財団さんのフィリピンパートナーの飯田さんをご紹介いただいたんですね。ちょうど飯田さんが東京に出張に来られていたタイミングに新宿のカフェで財団の浅野さんと三人でお会いしたのが最初です。

 

――事務所開設に関するアドバイスだけではなく、他にも接点があったのでしょうか?

 

まず最初に、私がフィリピンでやりたいことを聞いてくださって、そこから飯田さんの現地の人脈からキーパーソンをピックアップしていただいて、「広瀬さんという方から連絡が行くのでよろしく」と、各方面にアポを取ってくれたのです。なので、とてもスムーズに現地に入っていけたことが何より有難かったです。

他の接点と言えば、私サッカーが大好きなんですけど、飯田さんは今も現役でフィリピンの日系チームでゴールキーパーをされているんですよ。なので、サッカーの話で盛り上がったりします。先日も、マニラのスタジアムでばったりお会いして一緒に応援してたんです(笑)。

あとは、飲みながらいろんなビジネスの話をしたり、いろいろと情報交換させていただいてます。

 

――進出まで準備に1年半ほど掛けられたという事でしたが、今から同じことをするとして、どのくらいで出来そうでしょうか?

 

我々の業界は、何か設備投資が必要というわけではなく、パソコンとスマホがあればいつでもどこでも始められると思います。そういう意味では今すぐ海外進出ということも可能だとは思います。

フィリピンには税理士という資格はありませんし、日本の税理士資格もフィリピンでは使えませんので、現地ではコンサルティング会社という位置づけになります。特別なライセンスもいりませんので、経理の実務経験があるフィリピン人スタッフや監査を行う現地のCPA(公認会計士)を雇ったり契約したりできれば準備期間はそれほど掛からないと思います。

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広瀬さんの事務所のあるマカティ地区。多くの日系企業へのアクセスが良い場所でありながら、数人程度を常駐させる小さなオフィスであれば5万円程度から賃貸可能。

 

――実際、どういったお仕事が多いのでしょうか?

 

現在は、日本からフィリピンに進出する企業のお手伝いが中心です。進出する日系の現地法人の代表者やマネージャーと、我々の現地フィリピン人スタッフが現場の税務会計実務を担当して、私がその報告を受けて日本側で投資家に説明しながら意思決定の手助けをしているような状況です。

あとは、海外進出を考えている企業に対してモデルケースを提案したり、市場調査、あるいは知人の紹介など、税理士ですが税務会計以外の仕事のほうが今は圧倒的に多いと思います。

海外を行き来していると、さまざまなビジネスの話が入ってきますので、該当しそうな日本のクライアント企業に話をつないでいきます。最終的に話がまとまりフィリピンへの進出が決まったときはうれしい瞬間ですね。

 

――それを聞くと、フィリピンに出て行くというだけでも本当に色々と可能性が広がりそうなイメージが湧きますね。

広瀬さんから、これから海外進出を目指す方々にメッセージなどいただけるでしょうか?

 

実は、いま財団さんと士業が海外進出しやすいような仕組み作りをしたいと考えています。

正直、個人の士業が海外へ進出するのはかなり大変だと実感しているんですね。ですが、繰り返しになりますが、いま国は今後の日本経済の行く末を見越して中小企業の海外進出支援に力を入れています。でも、進出した後のサポートが不十分なのです。

そうした状況にあって、我々士業による海外でのサポートは、中小企業の海外進出にとって欠かせないものだと思いますし、実際に海外にでてその需要も感じています。

これから発展していくASEAN諸国に身をおきながら経済成長を実感できることは、とてもエキサイティングなことですし、将来の日本経済にとっても、このチャレンジはとても意義のあるものになると思っています。

これから進出を考える士業の皆さんにとって、財団さんの支援を受けられることは何より心強いと思いますので、是非一緒に海外進出を果たして、よきパートナーとして連携していきましょう!

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