10分で把握するインドネシア外資規制の現状と、規制対象の進出方法

ASEAN最大の人口を抱える国、インドネシア。

豊富な労働力や消費市場を狙って進出をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

そんなインドネシアについて、現状どのような外資規制が適用されているのか、

どんな業種が規制されているのかといった話だけではなく、自分のやろうとしているビジネスが規制対象だった場合、どういう所に抜け道があるのかといった事もお伝えしていきたいと思います。

外資規制の前に、進出先としてインドネシアってどういう感じなのか知りたい、という方はこちらもご参照ください。

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おおまかな進出難易度(★が多いほど難易度高)

 

製造業の進出難易度:★★☆☆☆

外資100%での進出が可能だが、輸入ライセンスの問題に留意する必要あり。

 

小売業の進出難易度:★★★☆☆

最低資本の規定により外資参入のハードルは高め。FC店形式で展開するのが無難。

 

卸売業の進出難易度:★★★☆☆

今のところ外資100%の参入が可能だが、規制強化の動きあり。

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業種別、外資規制の現状

まずインドネシアの外資規制について知る上で、大きく2つに分類すると禁止業種と規制業種があります。

 

外国投資が完全に規制されている分野(禁止業種)

これに該当するのは国防産業、環境破壊に繋がるような化学物質産業、カジノなど。

国の安全に関わる部分など、インドネシア政府にとって外国人からの投資は避けたい部分であり、外国人の出資が禁じられています。

国によってはメディア系や教育系なども禁止されている場合もありますが、インドネシアについては特にそういった規制がないというのは特色と言えるでしょう。

 

外国投資が条件付きで許可されている事業分野(規制業種)

まず、工業・農林水産業については製品や作物によって項目が多岐に渡るため、JETROで公開されている2014年度外資規制リストの翻訳版をご確認下さい。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/idn/invest_02/pdfs/indonesia_list.pdf

基本的にこのネガティブリストに載っていない業種であれば外資100%での参入が許可されていると言えます。

とはいってもネガティブリストを一つ一つ見ていくと大変なので、おおまかに纏めたものがこちら。

小売業・卸売業・サービス業・飲食業
デパート・スーパーマーケット・コンビニ等 内資比率100%、ただし営業床面積によっては100%可能
スーパーマーケット以外の小売業 内資比率100%
化粧品・織物・履物・電化製品・装飾品・玩具小売業 内資比率100%
通販・ネットを利用した小売業 内資比率100%
食料品・飲料小売業 内資比率100%
自動車・バイク、およびその部品などの販売 内資比率100%
卸売業 外資比率33%まで、ただし業態によっては100%可能
倉庫業 外資比率33%まで
クリーニング、床屋、美容室 内資比率100%
オフィスサポートサービス 内資比率100%
レストラン・ケータリングサービス 外資比率51%まで
バー・カフェ 外資比率51%まで
ホテル 外資比率51%まで
モーテル 外資比率49%まで、ジャワ・バリであれば70%まで
情報通信分野
通信網事業 外資比率65%まで
通信サービス事業(ISP、データ通信サービスなど) 外資比率49%まで
金融分野
リース業 外資比率85%まで
消費者金融、クレジットカードファイナンス、債権買取 外資比率85%まで
保険会社(損保、生保、最保険、保険代理店など) 外資比率80%まで
労働・移住分野
海外でのインドネシア人労働者職業斡旋 外資比率49%まで
国外でのインドネシア人労働者職業斡旋 大臣の特別許可が必要
教育分野
非公式教育(コンピューター教室、語学教室など) 外資比率49%まで
幼児教育 大臣の特別許可が必要
私立小学校、私立中学校、私立高校 大臣の特別許可が必要
保健分野
製薬業 外資比率85%まで
病院サービス 外資比率67%まで
専門医療サービス 外資比率67%まで
歯科専門医療サービス 外資比率67%まで
看護サービス 外資比率49%まで
病院経営のコンサルなど 外資比率67%まで

特に日本企業が多く進出している、代表的な4業種、サービス業・小売業・卸売業・製造業についてより細かく説明すると以下の通りです。

 

サービス業

外資100%というものは厳しいものの、合弁でもよければ門戸は開かれている国です。

サービス業といっても多岐に渡りますが、例えば宿泊であれば、

ホテル:外資比率51%まで

モーテル・その他の宿泊サービス:外資比率49%まで

となっています。

他に、アジアで日本人が営むことの多い業種であれば、

労働者派遣業:外資比率49%まで

塾などの教育業:外資比率49%まで

専門診療、歯科診療などのサービス:外資比率67%まで

とされています。

 

小売業(飲食業も含まれます)


インドネシアは少し事情が特殊で、床面積によって外資の参入可否が定義されています。

ミニマーケット:床面積400平方メートル以上

スーパーマーケット:床面積1,200平方メートル以上

百貨店:床面積2,000平方メートル以上

というのが外資参入の条件です。

参考までに、日本の駐車場付きの一般的なコンビニが150~180平方メートルぐらいなので、それなりに大きな店舗ではないと外資での参入は難しそうです。

これだけ見るとちょっとハードルが高いようですが、実際のところ日系のアパレルや雑貨店などは多く、それらはフランチャイズ契約・業務委託や販売委託によって出店しています。

直営店にこだわらなければこの方法を取るのもアリかと思います。

フランチャイズ展開については後述しますので、詳しくはそちらをご一読ください。

<注意点>

外資規制とは違うのですが、フランチャイズを含む小売業に対して取り扱う数量・種類の8割をインドネシア国内のものとするよう求める規定も存在します。

ただ、インドネシア商業省のコメントとしては

「専門的な商材を取り扱う小売店や日本食レストランなど、インドネシア産のものを8割使うというのが難しい場合はケースバイケースで判断するので相談してください」

という事なので、とりあえずは相談してみるのが良いかと思われます。

他の注意点としては、地方条例によっては小売店の出店地域が規制されています。これは地域によって異なるのですが、考え方としては昔ながらの商店街の保護のために、その近くへの出店を禁じる…といったものになります。

 

売業


外資が33%までに制限されています。

以前は外資100%が可能で、製造業に比べ初期投資が少ないことから外国企業の進出が多く、実際インドネシアに進出している日系企業の約2割は卸売業でした。

しかしあまりに参入障壁が低かったことから国内の業界団体からの規制強化の声を受けたそうで、2014年のネガティブリストから新しく規制対象になりました。

卸売業(ディストリビューター、と本来のネガティブリストには記載)の定義は曖昧な部分があるのですが、公式のコメントでは、少なくとも以下2つの場合は貿易会社として扱われ、外資100%での進出が可能とのことです。

  • インドネシア国外から輸入したものを国内で販売
  • インドネシア国内で仕入れたものを国外へ輸出

 

製造業

(シャープのカラワン工場の様子:新華社通信)

外資100%が可能です。

外国からの優れた技術を導入できる他、雇用の創出にも繋がるため、製造業の進出は歓迎されます。

しかしながら後述の最低資本金の高さから、合弁会社の設立なども考えられます。

<注意点>

原材料を国外から輸入する場合、複数ある輸入ライセンスから一つを選んで取得するのですが、ライセンスごとに輸入可能物品の制限が違うので、どのライセンスをどうやって取るのかについて検討する必要があります。

例えば転売目的の輸入ライセンスと、製造目的の輸入ライセンスは別なので、製造業者は輸入したものをすべて自社での生産用として消費する必要があります。

製造目的の輸入ライセンスしか取得していないのにうっかり転売してしまうとライセンス取り消しになる例もあるのでご注意ください。

 

資本金規制について


2012年以前と以降で制限の内容が変更されています。

制度変更は頻繁に起こるので、情報が最新かどうかには注意しましょう。

現行の制度を説明すると、最低資本金については国内投資か外国投資かで変わる事になっています。

国内投資であれば最低資本金約11万円から設立が可能なのですが、

外国投資の場合、土地建物を除く投資額合計が約9,000万円、資本金は2,250万円が必要となっており、

中小企業、特に小売業やサービス業の進出は困難となっています。

そのため、国内投資である(外国資本49%)と判断されるために、合弁会社を設立することもあります。

合弁会社については、少し長くなるので次の項目でまとめますので、そちらをご確認ください。

 

土地規制について


インドネシアでの土地所有には4種類ありますが、このうち所有権についてはインドネシア国籍の個人にのみ許可されています。

内資企業でも法人であれば所有できないことに注意して下さい。

  • 所有権(Hak Miilk):期限なし
  • 事業権(Hak Guna Usaha) :原則最長25年+延長25年(再延長あり)
  • 建設権(Hak Guna Bangunan) :原則最長30年+延長20年(再延長あり)
  • 使用権(Hak Pakai) :原則最長25年+延長20年

外資が保持可能な主な権利は事業権、建設権及び利用権になります。

 

事業権(Hak Guna Usaha)

農林水産業目的で土地を使用する権利です。抵当権の設定や譲渡も可能。

土地の肥沃さの維持等の義務、年1回の使用状況の報告義務等があります。

 

建設権(Hak Guna Bangunan )

土地の上に建物を建てて所有する権利です。工業団地の賃借人にも認められています。抵当権の設定や譲渡も可能。

 

利用権(Hak Pakai)

特定の目的のために土地を利用する権利です。抵当権の設定や譲渡も可能。

外国人の居住は利用権により可能。ただし、居住中止から1年以内に権利を譲渡する必要があります。

 

所有が認められていないということはリスクになり得るので、所有権を持つ個人を合弁会社の役員にしてしまう、なるべく長期の契約を結ぶようにする、などの対策は必要になります。

かつてない経済発展やTPPへの姿勢なども影響して、ASEAN諸国の外資規制は毎年変化しています。

外資規制の状況は、アジア進出をお考えのようでしたら半年に1回くらい確認してみても良いかもしれません。

 

外国人の就業規制について


インドネシア政府の方針としては、

  • インドネシア人の雇用を優先してほしい
  • インドネシア人が担うことができない特定の役職に限り、特定の期間外国人を雇用しても良い

とされており、この方針に沿った条件として

  • 就労予定の役職に応じた学歴、能力証明、5年以上の就業経験を有すること
  • 外国人1人に対してインドネシア人を最低10人雇用すること
  • インドネシア人労働者に専門知識を移転すること
  • 就労期間が半年以上になる場合、インドネシアの納税者番号を取得し、国家社会保障に加入すること
  • インドネシア法人の保険会社の保険に加入すること

を義務付けています。

こちらの記事でも現地経営者の意見として紹介していますが、最近はビザの申請が少し厳しくなっているようで、大卒以上でないと1年間の労働許可が認められない(半年のビザ)、といった風潮になっているようです。

ここだけ見ると少し厳しそうなイメージですが、学歴・能力証明・就業経験および、外国人1人に対してインドネシア人を最低10人、という項目に関しては、会社の監査役・取締役として就労予定の外国人は除くとされています。

なので、海外担当者を取締役にする事で上記の規制はいくらか回避できると言えるでしょう。

 

外資規制の対象業種が進出するなら

ここまでで外資規制の内容についてお伝えしましたが、もし自分の考えているビジネスが規制対象だったとしても、進出する方法はありますので、どんな方法があるのかご紹介していきたいと思います。

合弁会社設立

信頼できる現地のパートナー企業と合弁会社を設立し、国内企業扱いをして最低資本金のハードルをクリアする方法です。

資本比率が多くても日本49%、現地51%までと定められているような外資規制の対象業種の場合、議決権の問題で先方に経営権を取得される場合や、乗っ取りされる場合などもあるので注意が必要です。

信頼できるパートナーを探すというのはもちろんですが、何をもって「信頼できる」とするのかは難しいところ。

そこで、現地側の1株あたりの議決権を日本側より少なくすることで、実質的に経営権を取得するといった方法も行われます。

ただ、この方法は諸外国では規制の動きが出ており、規制前の内容に遡及適用されるという可能性は少ないですが、インドネシアもそれに追随する可能性があるので、最新の動向にご注意下さい。

また、他の方法としては、現地企業49%、日系企業が懇意にしている弁護士2%、日系企業49%という配分にすることで、もしもの時に有利な状態を維持する方法もあります。

弁護士については現地商工会などの紹介で信頼できる方と知り合う事が可能ですので、比較的確実な方法と言えるでしょう。

 

フランチャイズ展開

フランチャイズの権利を販売して拡げる方法です。

経営しているのは現地企業になるので、外資規制に引っかかることはありません。

中国や東南アジアで成功しているラーメンチェーン店はこの方法を取っていることが多く、

フランチャイズ加盟料2万円+麺は独占販売、といった形式でフランチャイズ網を広げている場合などがあります。

外資規制というのを抜きにして純粋に経営的な観点から言っても、現地の店舗の持つ販路・ノウハウを活用できるので、海外進出経験のない企業でも比較的容易に進出できることが魅力です。

 

名義貸し

また、インドネシア人から月最低1,000ドル程度で名義貸しを受けて会社設立するという方法もあります。

以前はそれなりに行われていた方法なのですが、タイを始めとしてこの方法は規制強化の傾向にあり、

インドネシアでも露見した場合罰則もありうるため、参考までにとどめて置かれたほうが良いかもしれません。

参考:タイの規制強化について

https://www.jetro.go.jp/biznews/2014/12/5477bd1746500.html

 

インドネシア以外の国を狙う

そもそもインドネシア市場にこだわりが無ければ、フィリピンはタイなど他のASEAN諸国を狙ってみるのも一手です。

特にミャンマーやカンボジアといった新興国であれば外資を呼びこむために外資規制が非常に緩い(というより、ほとんど規制されていない)ということもあり、先行者利益を狙ってそのような国を検討するのも一つの手段かもしれません。

 

他国の外資規制についてはこちらも御覧ください。

ミャンマー

カンボジア

タイ

フィリピン

 

外資規制にひっかかる事業、ひっかからない事業、それぞれが次に起こせる行動とは

外資規制の現状、外資規制の対象である場合の進出方法についてお伝えしましたが、では次にどういった行動に移ればいいのかというと…

合弁会社設立のためのパートナー探しはコンサルに相談するのが吉

外資規制の対象となった場合、合弁会社の設立を狙うのが良いということを先に書きましたが、

合弁会社設立に当ってまず必要なのはパートナー。

とはいっても、海外進出前なのに現地企業に人脈などがあるかといっても、それは難しいと思います。

仮に人脈があったとしても、その企業/人に本当にビジネスを任せて良いでしょうか?

あまり人を疑いたくないものですが、安心して現地企業/現地人に会社を任せていたらいつの間にか乗っ取られていた、方針の違いで対立してせっかく立ち上げたビジネスが瓦解してしまった、というリスクがあるのも事実です。

このようなことを避けるために、ある程度しっかりした機関などに紹介を依頼するべきでしょう。

現地の商工会議所や、進出支援企業などがその相談先となり得ます。

パートナーの紹介に関する依頼の他、合弁会社を組むことによるリスクの回避法など、豊富なノウハウを得ることが出来るので、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか?

インドネシアにある日系商工会議所としては、ジャカルタ・ジャパン・クラブが有名です。

http://jjc.or.id/

ジャカルタと冠してはいますが、日系最大規模のコミュニティーとしてインドネシア各地のビジネスの情報を持っている団体です。

進出支援企業としては、一社一社探すのも良いですが、出島などでいろいろな企業を比較してみるのも良いでしょう。

https://www.digima-japan.com

 

国によっては規制対象から外れることも…他国の規制状況のご紹介

他国の規制状況については、各国別に今回と同様の記事を更新していく予定です。

更新され次第こちらにリンクを貼りますので、是非またご確認下さい!

 

インドネシアの外資規制についてまとめた今回の記事、お役に立ったでしょうか?

他国についても順次纏めていきますので、ご確認くださいませ。

 

※本記事中の情報は2015年12月時点でのものとなります。

アジア関連の情報については頻繁に変化することが考えられますので、最新の情報についてはJETROなどでご確認下さいますようお願い致します。

また、ご不明点などございましたら当財団でもお問合わせは受け付けておりますので、よろしくお願い致します。

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