タイ外資規制の概要と、規制対象でも進出できる4つの方法

約6,500万人の人口を抱える国、タイ王国。

近年注目度が増しているミャンマー・マレーシア・カンボジア・ラオス等と国境を接し、地理的に見ても重要な国です。

日本企業の進出先候補となることも多い国ですが、そもそも進出にあたって検討しなければいけないのが外資規制について。

ただ、イチから調べるとなると少し手間ですので、こちらの記事では、タイの外資規制の概要、外資規制されている場合の進出方法など纏めております。

ぜひご一読ください。

 

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おおまかな進出難易度(★が多いほど難易度高)

 

製造業の進出難易度:★☆☆☆☆

外資100%での進出が可能。日本企業も多く進出しておりノウハウも豊富。

小売業の進出難易度:★★☆☆☆

相当の資本力がないと外資100%での参入は難しいが、49%までなら出資可能。合弁・FCでの進出が一般的。

卸売業の進出難易度:★★☆☆☆

上に同じく、合弁企業を組むなどで進出可能。

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業種別、外資規制の現状

タイの外資規制については、以下の3項目に分けられて定義されています。

  • 第一項目:外国企業の参入が禁止されている業種
  • 第二項目:国家安全保障や文化伝統・環境などに影響を及ぼすので参入が禁止されている業種
  • 第三項目:外国人に対して競争力が不十分であるとして参入が禁止されている業種

なお、この「外国企業の参入」についてですが、全く投資できないという訳ではなく、49%までなら上記三項目に該当する業種でも外国からの投資は可能となっています。

諸外国であれば投資そのものが禁止されていることもある第一・第二項目に外国人が出資できるのが、ちょっと特殊なところと言えるでしょう。

第一項目:外国企業の参入が禁止されている業種

国家体制に関わる内容になります。

例えばメディア系(新聞・ラジオ・テレビなど)や、農林畜産業などの食料自給に関わる部分、変わった所では仏像の製造(おそらく宗教的理由)などが該当します。

第二項目:外国企業の参入が禁止されているものの、商務大臣の認可があれば可能な業種

国家安全保障や文化伝統・環境などに影響を及ぼすので参入が禁止されている業種になります。

武器兵器の製造、国内運輸業及び航空事業や、

木彫品製造、骨董品販売などが該当します。

第三項目:外国人に対して競争力が不十分であるとして参入が禁止されている業種

おそらくこの項目が、一番「タイに進出しようとする人」に関係のある項目だと思います。

幾つかの代表的な分野について規制内容を纏めてみたのは以下の通り。

小売業・卸売業・サービス業・飲食業
最低資本金1億バーツ未満かつ1店舗あたり最低資本金2,000万バーツ未満の小売業 外資比率49%まで
最低資本金1億バーツ以上かつ1店舗あたり最低資本金2,000万バーツ以上の小売業 外資比率100%が可能
食料品・飲料小売業 外資比率49%まで
最低資本金1億バーツ未満の卸売業 外資比率49%まで
最低資本金1億バーツ以上の卸売業 外資比率100%が可能
広告業 外資比率49%まで
ホテル業 外資比率49%まで
観光業 外資比率49%まで
会計サービス 外資比率49%まで
法律サービス 外資比率49%まで
情報通信分野
全体的に特に規制なし 外資比率100%が可能
金融分野
全体的に特に規制なし 外資比率100%が可能
労働・移住分野
全体的に特に規制なし 外資比率100%が可能
教育分野
全体的に特に規制なし 外資比率100%が可能
保健分野
全体的に特に規制なし 外資比率100%が可能

代表的な3業種、製造業・小売業・卸売業についてより細かく説明すると以下の通りです。

 

製造業


外資100%が可能です。
技術導入、雇用創出などの観点から、製造業の進出は優遇されています。

ハイテク分野への投資や、国が成長を望む地域への進出など、タイ政府の方針と合致するものであれば優遇税制を受けることもできます。

しかしながら後述の最低資本金がネックとなるため、合弁会社の設立なども考えられます。

<注意点>

合弁会社というと、海外でパートナーを見つけるのが不安という方もいらっしゃるかもしれませんが、日系金融機関がタイ国内に有する投資会社がタイ法人の役割を果たすことによって、比較的安心できる形で合弁会社を設立することも可能です。

また、出資比率は株式数および株式の価値で判断されているので、タイ側の合意のもと、資本上は日本側49%・タイ側51%で、タイ側の1株あたりの議決権を日本のものより少なくすることで、実質的に日本企業のものとする、という手法もあります。

 

小売業(飲食業や宿泊業を含みます)

外資参入は可能ですが、外資100%というのは難しいです。

最低資本金によって外資の比率が決定されていて、最低資本金額1億バーツ(3.4億円)以上、かつ1店舗あたりの資本金が2000万バーツ以上というのが外資参入の条件です。

小売業で資本金3億円以上となるとちょっと中小企業にはハードルが高いかもしれません。

ただ、タイでは基準を満たしていない場合でも49%までであれば外国からの投資が可能なので、前述の合弁会社の方法を取るか、あるいはフランチャイズや販売委託で進出する方法が当面は一番無難かもしれません。

合弁・フランチャイズのメリット・デメリットなど、詳細については後述しますので、そちらをご一読ください。

 

卸売業

外資参入は可能ですが、外資100%というのは難しいです。

最低資本金によって外資の比率が決定されています。

最低資本金額1億バーツ(3.4億円)以上というのが外資参入の条件です。

これもやはり、資本金の面で外資100%での進出は難しいので、合弁会社などを組む形での進出になるかと思います。

 

最低資本金について


最低資本金については外国企業か内国企業かで代わります。

資本の51%を外国が持っていれば外国企業、51%をタイ法人が持っていれば内国企業とみなされます。

外国企業の最低資本は200万バーツ以上。

内国企業の最低資本は設定なし

となっています。

このため、先述の合弁会社を設立することによって、内国企業として最低資本金規制を避ける方法もあるのですが、若干リスキーな方法ではあるので、一度専門家への相談をおすすめします。

タイの外資規制全般については2000年施行の”外国人事業法”というものに基づいて決まっているのですが、2014年末にこれを改正するという話があったものの、結局当分は見送りという事になっており、暫くは現行の規制内容が適用されるものと考えられます。

とはいえ、自由化の波に押されてタイの外資規制もいずれは緩和される可能性があるので、タイ進出を考えるのであれば定期的にチェックするようにしましょう。

 

外国企業の土地取得について

原則として法人を含む外国人は土地取得不可になっています。

しかしながらBOI奨励企業や、タイ工業団地公社の工業団地に立地する企業の場合は外資比率関係なしに土地取得が可能です。

BOI=タイ投資委員会。タイの発展に役立つと判断された業種はこの委員会の審議を経て承認され、各種優遇措置を受けることができます。ざっくりと言えば、タイの産業の技術力を高めるもの、タイ国内の原材料を利用するもの、地方の雇用促進に役立つもの、環境問題を減らすものなどが該当します。また、明文化されていないものの長期投資や高い輸出額となる事業も奨励されるとのこと。

なお、4000万バーツ(1.3億円)以上の投資をした場合、居住用として1200平方メートルの土地取得が許可されています。

ちなみにこれは法人というよりも個人レベルでの話になるのですが、タイ人のパートナーを信頼して、タイ人名義で土地を借りていたらそのまま家を取られてしまった…なんて話もあるので、くれぐれもそういったトラブルに巻き込まれないように気をつけましょう。

 

外国人の就労規制について

まず、外国人の就業禁止業種が設けられています。

就業禁止業種39業種は以下の通り。

肉体労働 農林水産・畜産業 レンガ職人、大工 木彫品製造 運転士・操縦士
店員 競売業 会計業 貴石類の切削・研磨 理容師・美容師
織物製造 葦・藤など原料の製品の製造 手漉き紙製造 漆器製造 タイ特産楽器製造
黒象眼細工 貴金属製品製造 石工 タイ特産玩具の製造 マットレス・毛布製造
托鉢用鉢の製造 絹手工芸品の製造 仏像製造 ナイフ製造 紙・布の傘製造
靴製造 帽子製造 仲介・代理店業 建設コンサル 建設設計
服仕立業 陶磁器類製造 手巻きタバコ製造 観光案内 行商・露店
タイ文字タイピング 絹紡績 事務員・秘書 法律・訴訟関連  

おおむね手工業に関連する専門的な業種になりますが、観光案内、建設関連、靴や帽子の製造、事務員・秘書などは日系企業にも関わってくる分野かもしれません。

許可されている業種であっても外国人1人の労働許可を取得するには資本金払込額200万バーツ(約650万円)必要と言われています。

ただ、貿易業務を行う外国法人の駐在員事務所で働く外国人で、

  • 本社が販売する商品の推奨を販売代理店や顧客に対して行う
  • 本社の新商品またはサービスに関する広報を行う
  • 本社に対してタイ国内のビジネス動向を報告する

役割の場合、2人以内ならば労働許可が与えられることになっています。

また、

  • 本社のためにタイ国内で商品やサービスを購入する相手を探す
  • 本社のためにタイ製品の質的・量的管理の職務に携わる

外国人は、最大5人まで当該職務についての労働許可の支給が許可されることになっています。

 

外資規制の対象業種が進出するなら

合弁会社設立

現地企業と合弁会社を設立して進出する方法です。

タイでは外国企業の持ち株比率が49%以下であればその企業は「タイ企業」とみなされます。

このメリットとしては外資規制を避ける以外にも、諸々の制度で恩恵を得ることができます。

デメリットとしてはタイ側に主導権を握られる形になるので、トラブルの火種となる可能性があること。

リスク回避の方法としてはいろいろありますが、一つ挙げるとすると会社の設立時点で、「株主総会が成立するためには出席株主の総持ち株数を全体の52%とする」といった方法があります。

日本人が単独代表の場合(株主総会を開かないと解任や追加が出来ない)に限ります。

また、現行の規制では、あくまで出資比率は株式数か株式の価値基準で判断されているので、議決権比率は考慮されていないことを使って、発行株式数ではタイ側に過半数があるものの1株あたりの議決権を少なくするという方法も取られていますが、これは今後規制対象になるかならないか議論されているグレーな手段になるので、避けたほうが良いかもしれません。

加えて、合弁企業を設立する際に日本企業が49%を出資、残りの51%については、別個に設立した日系合弁企業(日本資本49%タイ資本51%)が出資することで、実質的な持ち株比率では日本企業が多くなる…といった手法も取られています。

 

フランチャイズ展開

フランチャイズの権利を販売して拡げる方法です。

タイではなるべく外資企業の直接経営店舗を減らしてフランチャイズにシフトさせる方向に規制を行っており、セブン-イレブンやローソンなどのコンビニエンスストアがフランチャイズで次々に店舗を広げています。

フランチャイズ展開での進出についてはコンサルを行っている企業もあるので、問合せてみても良いかもしれません。

https://www.digima-japan.com/country/thailand/shop_support

 

名義貸し

タイ人にお金を払うことで名義を借りて、実質的に外国企業であるタイ法人を設立するという手段があったのですが、あまりにもその方法が頻繁に利用されすぎたため、遂に規制が厳しくなりました。

リスキーなので避けるのが無難そうです。

 

タイ以外の国を狙う

そもそもタイにこだわりが無ければ、他のASEAN諸国を狙ってみるのも一手です。

特にミャンマーやカンボジアといった新興国であれば外資を呼びこむために外資規制が非常に緩い(というより、ほとんど規制されていない)ということもあり、先行者利益を狙ってそのような国を検討するのも一つの手段かもしれません。

 

他国の外資規制についてはこちらも御覧ください。

ミャンマー

カンボジア

インドネシア

フィリピン

 

進出する時、次に起こせる行動とは

合弁会社設立のためのパートナー探しはコンサルに相談するのが吉

外資規制の対象となった場合、合弁会社の設立を狙うのが良いということを先に書きましたが、合弁会社設立に当ってまず必要なのはパートナー。

とはいっても、海外進出前なのに現地企業に人脈などがあるかといっても、それは難しいと思います。

仮に人脈があったとしても、その企業/人に本当にビジネスを任せて良いでしょうか?

あまり人を疑いたくないものですが、安心して現地企業/現地人に会社を任せていたらいつの間にか乗っ取られていた、方針の違いで対立してせっかく立ち上げたビジネスが瓦解してしまった、というリスクがあるのも事実です。

このようなことを避けるために、ある程度しっかりした機関などに紹介を依頼するべきでしょう。

現地の商工会議所や、進出支援企業などがその相談先となり得ます。

パートナーの紹介に関する依頼の他、合弁会社を組むことによるリスクの回避法など、豊富なノウハウを得ることが出来るので、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか?

タイにある日系商工会議所としては、バンコク商工会議所が有名です。

http://www.jcc.or.th/

進出支援企業としては、一社一社探すのも良いですが、出島などでいろいろな企業を比較してみるのも良いでしょう。

https://www.digima-japan.com

ここまで読んで頂き、進出を検討されている方はご自身の事業が制度的に進出可能そうか不可能そうか、概ね知って頂けたかと思います。

ただ、もし「自分の事業で進出は難しいのかな…」と思った場合でも、進出の専門家の方などに相談してみると、意外な方法で進出が可能だったりする場合があります。

ご自身だけで悩まず、まずはJETRO等の機関にご相談いただくことをおすすめします。

今現在進出可能かだけでなく、今後可能になりそうかどうかなど、広い目で検討することが重要です。

 

※本記事中の情報は2015年12月時点でのものとなります。

アジア関連の情報については頻繁に変化することが考えられますので、最新の情報についてはJETROなどでご確認下さいますようお願い致します。

また、ご不明点などございましたら当財団でもお問合わせは受け付けておりますので、よろしくお願い致します。

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